とある情報教師の独り言 #2

高等学校の教科『情報』の光と影

部活動問題について

新年度になりました。

 

私も新しい学校での勤務が始まりました。久々の常勤講師です。非常勤とは違い、教科以外の仕事もすることになります。その中に部活動もあるわけですが、私は特に経験のないスポーツの運動部担当になりました。運動部の顧問自体は、過去に常勤講師をしたときにも経験してはいるので、さほど抵抗はありません。

 

しかし昨今、部活動については物議を醸し出していますね。

soctama.jp

 

部活動の問題点とは、単純に教員の勤務時間を圧迫してしまい、授業準備の時間が確保できず、授業の質が低下してしまっていたり、休日が少ないなどブラックな勤務になってしまい、教員の志願者の減少に拍車をかけてしまっていたりします。

 

私は部活動というもの自体が時代に合わないものだと考えています。そもそもはレクリエーション的な位置づけでしたので、教員の負担にもなりませんでした。しかし、大会が開催されるようになり、競争意識が働くようになり、教員は指導者にならなくてはならなくなりました。そうなってくると、学校で抱えるには無理が出てきているのです。

 

理想の形を問うのであれば、部活を学校から切り離すことでしょうね。学生スポーツは地域などでチームを結成し、そこで指導者を募集すればいいと思います。部活をやりたい教員は、そこで指導者に志願すればいいでしょうしね。勤務に支障が出ない範囲で。

 

ただ、根本的なことを変えるのは難しいです。さらに難しくしているのが、教員の中でも部活に対する考えが一枚岩ではないということです。

 

新年度 部活したくない教員5割 「学びの時間を増やしたい」(内田良) - 個人 - Yahoo!ニュース

 

データがやや古いですが、半分の教員は部活に対して肯定している以上、これを根本から覆すことに無理があると思います。部活指導をしたくて教員になる人も少なくはありません。

 

私が部活動が学校の中にあっても構わないとは思っていますが、時代に合わせて変えていくことが重要だと思っています。結局の所、根性論や精神論というのが一番邪魔していて、もっと科学的に考えていけるようになれば、無理なく効率よく運営していけるのではないでしょうか。

 

誰のための教科書なのか

www.asahi.com

 

「また同じ過ちを繰り返すのか…」

 

他の教科ではありえません、専門外の教員のために教科書の難易度を下げるなんて。しかし、それが当たり前のように行わるのが情報科です。

 

以前、教科書会社の人と話をしたことがあります。情報科は人がいないので、非常勤講師にすら教科書を売り込んできます。とにかく、生徒ではなく先生が分かりやすいかどうかが重要らしく、その辺のアピールをされました。また、教科書会社の人の話では、専門外の先生から教えやすいように指摘をされたとか何とか。こうやって情報科の教科書は、どんどん使いにくくなっていったような気がします。

 

ちなみに私は教科書を殆ど使いません。定期テストの範囲にするくらいです。使いたいというより「使えない」といった方が正しいでしょうか。教科書に沿って授業をしてたのでは、まともなことなんて教えられないと思います。

 

教科書を使わないとなると、プリントなどの自作の教材を作ることになります。確かに大変ではあります。私は非常勤だったので、教材研究する時間が十分にありましたが、教諭や常勤講師の先生だと、確かに教材研究の時間が厳しいのかもしれません。

 

ただ、よくよく考えてみると、教材研究の負担って何なんでしょうね。教員はそれが一番の仕事だと思うのですが、いつしか教材研究は仕事ではなく、趣味に近いものになってしまっています。

 

教員の仕事はブラックブラックと言われ続けていますが、きつい仕事であっても、それが授業改善のための時間であれば、先生方は弱音を吐くことなどないはずです。一番優先すべき教材研究が、一番おろそかになってしまっていることが、教員の仕事の一番の問題な気もしますね。

情報科教員の魅力

今までネガティブなことばかり書いてきましたが、情報という教科の魅力を書いていこうと思います。教員採用の少なさや副免許取得などのハードルはありますが、情報という教科自体はとてもやり甲斐のある教科です。

 

1.これからの未来を支える分野である

今でこそ教科としての扱いは決して良くはありませんが、共通テストに教科として追加されるなど状況は改善しつつあります。これからの情報社会において決して無視はできない分野であることは間違いありません。いずれ学校の中で中心的な存在になっていくと思います。

 

2.実習中心の授業ができる

コンピュータを使った実習というのは生徒の食いつきもよく、座学の授業と違い、よほど質の良い授業をしないと生徒が寝てしまったり、内職(他教科の勉強)をされたりすることも比較的少ないです。もちろん実習内容にもよりますが。

 

3.準備室がある

職員室以外にも自分の居場所があるのは結構大きいものです。仕事に集中したいとき、机を広く使いたいときなど、理由は色々あると思います。また、他に誰もいなければ音楽を流しながら仕事もできますね。

 

4.冷房が使える

最近は普通教室にもエアコンが入るようになりましたが、まだまだ設置されていない学校も多いです。しかし、コンピュータ室や準備室は基本的にエアコンがあります。夏場に、快適な空間で授業や仕事ができます。

 

私は元々数学の教員でしたが、情報科の教員になりました。なぜ情報という教科を選んだかといえば、単純に教材研究や授業が楽しいからという理由が大きいです。数学も面白かったですが、新しい取り組みというのが少ない教科でもあります。情報という分野は常に変わり続けるもので、教材研究が大変ではありますが、新しいことを考えるということは、いくつになってもワクワクするものです。

 

今、情報という教科が抱えている問題は、教科の内容とは何一つ関係がありません。問題の解決は時代が後押してくれると思います。教科の魅力は他のどの教科よりもあると思うので、1人でも多く志願者が増えることを祈りたいです。

情報科の非常勤講師

他の自治体は分かりませんが、自分の県の場合、情報科の正規教員は今年度で7人しかいません。昨年の教員採用試験で1人だけ合格しましたので、新年度の段階で8人のみ情報科の正規教員が存在することになります。

 

しかし、当然うちの県の高校は8つ以上存在します。専任がいない学校の情報科は、必然的に他教科の教諭が兼任するか、非常勤講師が担当することになります。ちなみに、常勤講師の可能性は殆どありません。

 

せめて常勤で働ける可能性があれば、収入を安定させながら採用試験を受け続ける考えも持てますが、非常勤という不安定な職しか無い以上は、よほど志が高くないと講師すらする発想になれないと思います。

 

私は、情報科の非常勤講師を続けてきましたが、2校掛け持ちで週20時間程度の授業を担当して、年収が230万くらいです。贅沢さえしなければ生活には困りませんね。独身なら、それなりに趣味も満喫できるし、その気になれば貯金もできます。

 

ただ、うちの県でいうと、情報科の非常勤講師ですら仕事がなくなってきているのが現状です。講師ですら成り手が枯渇しつつあるので、他教科の教諭に兼任させる方針になっています。非常勤を当てにして、担当が誰も見つからないのが一番困ると思っているのでしょう。

 

他教科と兼任だろうが、情報という教科に真摯に向き合ってくれるなら問題ありません。しかし、専門ではない教科にために情熱を注げる人が果たしてどれくらいいるのでしょうか。少なくとも他教科で情報を引き受ける人は、「仕方なく」引き受ける人もいます。そういった先生が授業をしたときに、まともな授業になるとは思えません。

 

そう考えると、一番の被害者は生徒なわけです。せめて、いま非常勤講師で頑張っている先生を積極的に採用して、質の良い授業を提供し、情報科の教員を目指す生徒を1人でも多く生み出していくべきではないかと思います。

臨時免許という罪

mainichi.jp

 

共通テストに「情報」が追加される可能性が高くなり、各地で情報科教員不足の問題も表に出てくるようになりました。これを機に教員採用が積極的に行われればよいのですが、私は厳しいものだと思っています。

 

このブログでも述べてきたように、志願者がいません。情報系の人材というのは、学校に限らず重宝されます。場合によっては学校教員よりも遥かに待遇のいい仕事も多いでしょう。その可能性を蹴ってまで、あえて茨の道の情報科教員を目指そうとする人がどれくらい存在するのか、という話です。

 

先日、今年度で辞める学校で、私の後任者への引き継ぎがありました。後任の方は、情報の授業を行ったことがないどころか、自身が高校時代に情報の授業がなく、そして情報の教員免許すら持っていないという方でした。要は情報という教科については、まったくの素人なわけです。

 

ちなみに、「免許がなくても大丈夫なの?」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、教員免許には「臨時免許」というものがあり、申請すれば誰でも教員免許を取得できます。ただし、期間限定という制限はあります。この臨時免許というのが諸悪の根源でもあります。学校としては「授業の質が下がるよりも、免許を持たない人間が教壇に立つことの方が罪」と思ってしまうようになったからです。

 

私の後任が未経験者になってしまった理由は明らかで、もう非常勤講師ですら情報の教員は存在しなくなっているのです。私の知っている情報の教員も非常勤で2校以上掛け持ちをし続けています。その一方で、教員採用に未来が感じられず、情報科教員の道を捨ててしまった人もいました。

 

こういったケースは、自分の場合に限らず、各地で起こっていると思います。もう、待っているだけでは教員志願者は増えません。待遇を改善し、教員採用の間口を広げない限り、情報科の教員問題は改善されることはないでしょう。

 

人材の育成というものは時間がかかります。長い間、情報という教科を軽くみてきた結果が、積もりに積もって大きな山になってきているのです。

Scratchに触れてみる

「Scratch」は一言でいうと疑似プログラミングツールとでも言いましょうか。プログラミング言語がわからなくてもプログラムが組めるもので、小学生でも気軽に扱えるという代物です。小学校で始まったプログラミング教育でも使われていたりするそうです。

 

scratch.mit.edu

 

私はScratchの存在は知ってはいましたが、手を付けてはいませんでした。高校の授業でやるならプログラミング言語を打たせて、実際のプログラミングをさせればいいと考えていたからです。

 

しかし、実際に使ってみると、子ども向けとはいえ作れるプログラムは幅広く、ただ単に言語を用いないだけで、やっていることはプログラミングそのものな感じです。そして、ブラウザで動作できるところも大きいですね。ソフトのインストールが不要なため、Chromebookでも普通に使えるのがいいです。

 

もちろんこれがプログラミングの全てでがありませんが、導入として扱うには十分すぎるものだと思います。

情報デザインについて考えてみる

情報Ⅰの内容にある「情報デザイン」ですが、かなり漠然としているように思えます。デザインというとPhotoshopだったりIllustratorだったり、Adobeのツールで何かやるようなイメージではあります。

 

しかし、デザインとはいっても、私は芸術系の出身でもないし、デザインについて勉強してきたわけでもありません。元々はただの数学教員でしたし。なので、デザインをどう教えるか、イメージがいまいち湧きませんでした。

 

そんなわけで本屋へ行きました。私は紙の媒体も愛用しています。タブレットだと使いにくいというのと、本屋に行けば直接中身を見ながら買うことができます。デジタルで購入するとなると買わないと全部見れませんからね。

 

適当にコンピュータ関係の棚を眺めていたら、ふと「Webデザイン」というワードに目が止まりました。確かにWebデザインも情報デザインと言えると思います。Webページ作成に情報デザインを絡めれば、プログラミング的な要素も兼ねることができます。また、Webページ作成の上でも画像処理が必要になってくるので、画像編集ソフトもついでに使うことができるかもしれません。

 

ちなみに見つけた本はこれです。

 

 

この本の冒頭に、「デザインはあくまで『伝えるための手段』であり、『美しく装飾すること』ではない」と書かれてありました。そう考えると、芸術系を学んでいない自分にも十分教えることができます。伝えることについては、プレゼンでも学んだことなので、情報デザインにも応用ができそうなわけです。

 

さらに、この本では「センスとは知識である」とも書かれてありました。つまり、勉強すれば誰にでもできるということです。これは生徒たちにも教えるべきことですね。自分ができない理由を才能やセンスのせいにしがちではありますが、センスの部分については努力でカバーできるわけです。

 

てなわけで、私は情報デザインをWebデザインで教える方向で、授業を組み立てて見たいと思います。