とある情報教師の独り言 #2

高等学校の教科『情報』の光と影

オンラインでの取り組み

私は休校期間中にオンライン授業ができませんでした。確実に出来るという保証がない以上は、余計なトラブルを避けるため及び腰になってしまっていたのだと思います。そもそも優先すべきは5教科(特に国数英)だったし、また情報科は新1年生が対象なので、お互いに顔もわからないまま、いきなりオンラインというのも少し抵抗がありました。せめて教員紹介が何らかの形で先行していれば、少しは可能性があったのかもしれません。

 

しかし、それでオンラインでの取り組みから逃げるのは腑に落ちなかったので、自分なりに出来る範囲で試みました。ZOOMなどの会議ツールは難しいと思い、解説動画を作成しYou Tube上で公開しました。これもコンプライアンス的にグレーゾーンではありましたが、あくまで情報科非常勤講師の戯れ程度な感覚で、学校名などは一切公表せずに公開しました。

 

www.youtube.com

 

私自身、動画編集は素人レベルだったので、拙いものになっておりますが、実験的な意味も込めてやってみました。結果としては、視聴回数がそこまで伸びなかったので、そこまで効果はなかったものだと思います。理由としては、「そもそも他教科を優先していた」「活用の仕方を徹底していなかった」「教材の質も良くなかった」などが挙げられます。要はまだまだ修行不足だったのだと思います。

 

このYou Tubeチャンネルの動画は、コメントなどのやりとりは一切不可能にしています。理由としてはコンプライアンス遵守のためです。SNSなどの双方向のやり取りは学校では基本的に禁止されています。許可を取れば可能かとは思いますが、そこまでの勇気はありませんでした。しかし、うっかりコメント不可の設定を忘れてしまい、コメント可能になっていた動画に、いくつか反応がありました。悪ふざけなもののありましたが、You Tubeでの反応は決して悪くはありません。運用次第で、生徒のモチベーションを上げる方向の持っていけそうな手応えはありました。

 

私はこういったオンラインでの取り組みは、休校期間中の対策だけでなく、普段でも学校を休んだ生徒や、不登校生徒に対するケアにも使えると思っています。特に本県は、不登校児童生徒が多いのです。不登校を登校させることでしか解決するのではなく、オンラインで対応できるようにし、その結果登校に繋げることが大事なのだと考えています。

 

オンラインでの学習は慣れない部分も多く、対面授業の方が充実しているのが現実ではありますが、これからの時代はオンラインでのやり取りは次第に避けられなくなってきるので、今のうちから、やれることをやっておきたいですね。

 

 

オンライン授業が進まない理由

www.workingmother-rikumiler.com


 

去年の今頃は全国の小中高校で一斉休校が行われていました。その影響は大きく、結果として約2ヶ月も授業が遅れることになりました。小中学校だと約3ヶ月もの遅れとなりましたね。

 

休校期間中に言われて続けていたのがオンライン授業です。登校せずとも授業が受けられれば、感染拡大と学習の遅れを同時に対策できる。しかし、多くの学校でオンライン授業はできませんでした。

 

理由はいくつかあります。分かりやすいところでは、そもそも環境が整っていなかったこと。自宅にPCやネット環境がなかったり、スマートフォンを持っていても無制限に使えるWi-Fiがなかったり、Wi-Fiがあったとしても通信環境に不安があったりしました。環境が整っていないのは当然で、今まで学校というのはオンラインで授業をするなど全く想定していなかったのです。

 

あれから1年たった今、学校はオンライン授業をできるようになっているかというと、そうではありません。なぜなら、平時にオンライン授業を行うことがないからです。環境が整っていればオンライン授業ができるかといえば、そうではありません。実際に行ってみて分かることは沢山あるはずなのに、非常事態に備えたオンライン授業の練習を全く行っていないのです。

 

また、うちの県で言うと、高校でも年度内に1人1台のPC環境を整えると聞いていましたが、実現しませんでした。理由はPCよりもエアコン設置を優先してしまい、予算がなくなってしまったのです。エアコンも大事だと思うかもしれませんが、オンライン授業の環境を整えていれば、そもそも登校しなくてもいいのです。こういったことから、是が非でも登校させるという意識が離れない限り、オンライン授業が進むことはないでしょう。

 

小中学校でもGIGAスクール構想で環境は整いつつありますが、それを活かすも殺すも教員次第です。ゆとり教育も、情報教育も、先進的な取り組みをことごとく潰してきたのも他でもない現場の教員です。オンライン授業も同じ道を辿らないことを祈るばかりです。

 

 

プレゼン関係おすすめ本

プレゼンについて色々と書いてきましたが、あくまで私は教員なので、授業でも使えそうな視点でプレゼンの勉強をしています。

 

そこで、自分が参考にしてきた書籍をいくつか紹介します。

 

ガー・レイノルズ シンプルプレゼン

ガー・レイノルズ シンプルプレゼン

 

ガー・レイノルズ先生の本です。主にスライドのデザインについて学べます。

 

 

世界最高のプレゼン教室(80分DVD付き)

世界最高のプレゼン教室(80分DVD付き)

 

 これは過日の記事でも紹介しました。プレゼンにおける話の組み立て方について学べます。学生の方や社会人の方まで、プレゼンをする機会のある全ての人に読んで欲しいです。

 

 

 PowerPointでのスライド作成を、ダメな例と比較しながら解説しています。東大式とありますが、説明は非常に分かりやすいです。

 

 

スライドを極めればプレゼンは100%成功する!

スライドを極めればプレゼンは100%成功する!

  • 作者:河合 浩之
  • 発売日: 2015/04/23
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 これも過日の記事で紹介しました。スライド作成だけでなく、話の作り方も理論的に解説してあります。

 

 

堀江貴文のゼロをイチにするすごいプレゼン

堀江貴文のゼロをイチにするすごいプレゼン

  • 作者:堀江 貴文
  • 発売日: 2019/09/27
  • メディア: 単行本
 

 何かと物議を醸しだす堀江貴文氏ですが、プレゼンの考え方は納得できるものが多いです。

 

情報の教科書にもプレゼンについての解説は書いてありますが、正直なところ殆ど役に立ちません。最低限のことしか書いていないので、質の良いプレゼンを求めるとなると、教科書以外からも学ばないといけません。これは、情報科の教員に限らず、探究活動等で生徒にプレゼンをさせる学校の先生全員に学んで欲しいくらいです。

 

プレゼンの評価

プレゼンの授業は生徒にとって有意義なものですが、授業担当者として評価をどのようにするかが難しいところです。高校の場合、成績を点数で出さないといけないため、評価の観点をハッキリと示さないといけません。

 

しかし、プレゼンは表現するものであり、それを点数化するのは大変です。M-1グランプリなどのお笑いコンテストでも点数を出していますが、毎年点数について物議を醸しだしています。何故に難しいのかというと、結局のところ表現に対する評価というのは、その人の主観によるものが大きいのです。

 

そこで、生徒にも点数をつけてもらいます。これを相互評価と呼んでいます。いくつかの評価項目を用意して、5点満点などで点数をつけてもらいます。この相互評価も成績の一部になることは事前に伝えます。ただし、点数の付け方があまりに不自然な場合は、相互評価は参考にしない、とも伝えます。

 

これは生徒を信頼できなければ難しい方法です。こちらも「君たちは他人を正当に評価できる優秀な生徒だと思って、相互評価を実施している」と伝えます。それでもまともな評価をしない生徒もいますが、明らかな怠慢、例えば全員に満点をつけるなどの行為に対しては、授業の評価を下げると釘を指しておきます。

 

また、相互評価は点数を集計し、発表した生徒1人1人に集計結果を渡します。もちろん誰が何点入れたかは分からないようにします。これによって、自分が付けた評価がクラスメイトに届くために、責任をもって点数をつけないといけない意識が働きます。

 

ここまですれば大抵の生徒は、ちゃんと評価を行ってくれます。

 

これらによって、成績に客観性を持たせるだけでなく、生徒はプレゼンをちゃんと聞くようにもなります。他人を評価するというのも、成長の上では必要なことであるし、彼らにとって良い機会になると考えています。もし万が一、相互評価が不自然な結果になったとすれば、成績の参考にしなければいいだけの話です。

 

けど、集計するって大変じゃない?と思う方もいるかもしれませんが、そこでICT活用なわけです。私は、コンピュータ室で授業を行うので、生徒たちは目の前のPCで、Excelファイルで作った評価シートに入力します。あとはデータを回収すれば、集計はすぐにできます。PCでなくとも、マークシートを作成したり、タブレットが使えるならば、アンケートフォームなどを活用すれば、デジタルな採点を行うことは容易です。これらを紙でやろうとすると流石に大変です。

 

この辺のアイデアは、こちらから得ました。

www.okamon.jp

ちなみにこのサイトは、私が情報科の教員になったときに、教材研究の参考にさせてもらった、師匠のようなものです。

 

評価も含めて授業を構築しないと、教員にとっても生徒にとっても「ただやっただけ」のものになってしまいます。プレゼンの評価自体は難しいですが、だからこそ細かく基準を設けることが重要です。

発表のときの注意点

スライドなどのプレゼン資料作成については、生徒たちはポイントを理解し、良いものを作ってくれます。しかし、せっかく良いスライドを作ったのに、それを一気に台無しにしてしまうのが、間違った発表の仕方です。

 

それは、「原稿を読む」という行為です。どこで仕込まれたのか分かりませんが、特に進学校の生徒ほど、放っておくと発表原稿を作成します。原稿を作ること自体は悪くはありませんが、それをただ読み上げるだけのスピーチを行ってしまうのです。それは、プレゼンにおいて絶対に許されない行為の1つです。

 

nulljapan.jp

 

いろいろな解釈はありますが、原稿を見ながらプレゼンをするのは、完全に聞き手を置き去りにする行為であり、聞き手から見れば「自分たちのことはどうでもいい」と思われてしまいます。話し手の方も、原稿を読むのは聞き手のためでなく、自分が間違えないためということであり、相手に伝えようとする気持ちなど全く無いわけです。

 

考えてもみてください。異性に告白するときに原稿を読みますか?受験や就職の面接で原稿を読みますか?自分の気持ちやアイデアを伝える時は、上手に読み上げることなど左程重要ではありません。言葉が詰まってもいいから、相手の方を見て、自分の言葉で伝えることが何よりも重要です。

 

しかし、授業におけるプレゼンは生徒たちにとって「やらされている」側面が強く、自分の考えを伝えることよりも、失敗をしたくない気持ちの方が勝ってしまい、原稿読みをつい行ってしまうのだと思います。また、学校の先生も生徒に失敗させたくがないゆえに原稿読みを許可してしまったり、そもそも原稿読み自体が悪いものだと思わなかったりして、生徒たちは間違った認識を持ってしまいます。

 

私は、少し乱暴ではありますが、原稿読みを禁止しています。厳密には、原稿読みをするのは自由だけど、評価を最悪にすると伝えます。それでも発表のときにやってしまう生徒もいたりしますけどね・・・。その辺は評価に反映することで気づいてくれるよう祈るしかありません。

 

ただし、実際は殆どの生徒は原稿に頼らず、下手でも自分の言葉でプレゼンをするようになってくれます。もちろん上手に話せない生徒も多いですが、苦手でも一生懸命伝えようとする姿勢は、上手に話すことよりも大事なのだと思います。

ストーリープレゼン

前回のPREP法というのは、相手に伝わりやすい話の作り方として手軽な方法ではありますが、どちらかというと、短い時間でのプレゼン向けの方法です。また、自分の考えや主張のみを伝えるときに有効な方法ではあります。

 

今回の「ストーリープレゼン」はPREP方の応用になります。研究発表や企画発案など、やや難解な内容になりがちなプレゼンを、分かりやすく伝えるために有効な方法です。

 

このアイデアはガー・レイノルズ氏の書籍から学びました。

 

世界最高のプレゼン教室(80分DVD付き)

世界最高のプレゼン教室(80分DVD付き)

 

 大学生や社会人向けの内容ではありますが、高校生や中学生でも課題解決学習でプレゼンすることもあるので、教員の方にも是非読んで欲しい一冊です。

 

ストーリーつまり物語を書くかのように、話の内容を考えることが重要とされています。しかし、多くの人は小説家のように物語を考えるなんでできません。そこで、この本では次の手順で話の内容を作ることで、誰でもストーリープレゼンができると述べています。

 

例えば、ある問題解決のプレゼンをするとして

 

①理想「〜であったらいいのに」

②現実「しかし現実は〜です」

③原因「なぜそのような現実になっているかというと」

④解決模索「〜はどうでしょう?または〜はどうだろう?」

⑤解決「私は〜が一番ベストな解決策だと思う」

⑥聞き手に促す行動「ぜひ皆さんも〜してはいかがでしょうか」

 

一番のポイントは⑥だと思います。プレゼンとはアイデアを相手に伝えるだけではダメです。伝えた上で相手に考えを変えてもらわないと意味がありません。しかし、生徒のプレゼンを見ていると⑥が欠けていることが多いため、いまいち伝わってこないのです。

 

このストーリープレゼンは形式だけなら誰でも簡単に真似できます。生徒に課題解決学習でプレゼンさせるときも、この形式でストーリープレゼンを行えば、ただの調べ学習とは段違いに良くなります。もちろん、この形式だけが全てではありません。欲を言えば、今回紹介したガー先生の本を、生徒たちに買わせて読ませたいくらいです。

相手に伝わる話の作り方

プレゼンにおいてスライドの作成も重要ではありますが、やはりスピーチの内容がお粗末では話になりません。授業ではスライド作成よりも、話の作り方を重視しています。話の内容がしっかりしていれば、スライドの質も自然と良くなります。逆もまた然りです。

 

話の作り方にもテクニックがあり、身に付ければ誰でも分かりやすいスピーチができるようになります。授業では主に2つの手法を紹介しました。1つは「PREP法」と呼ばれるものです。

 

makefri.jp

 

簡単にPREP法の説明をしますと

Point :要点(結論・主張)
Reason :理由(結論にいたった理由・そう主張する理由)
Example:具体例(理由に説得力を持たせるための事例・データ・状況)
Point :要点(結論・主張)

(上記のリンクの記事から引用)

 

これをプレゼンに応用します。私は授業で「おすすめの〇〇紹介」というテーマで生徒にプレゼンをさせます。スライドを作る前に、このPREP法を基にして話の内容を考えさせるようにしています。

 

例えば、「おすすめのカフェ紹介」というプレゼンをするとしましょう。

 

(Point)私が紹介するのは○○というカフェです。

(Reason)この店は店内の内装もお洒落で、メニューも豊富です。

(Example)おすすめのメニューは「パンケーキ」です。新鮮なフルーツと生クリームの組み合わせが絶品です。

(Point)ぜひ一度訪れてみてはいかがでしょうか。

 

これにお店や料理の写真を大きく載せたスライドを作れば、分かりやすく印象にも残るプレゼンの完成です。話が苦手な人でも、話の作り方さえ出来ていれば上手なプレゼンができます。

 

このPREP法は大学入試などの志望動機や自己PRを書く時にも使うので、学校の先生ならば普通に知っていることではありますが、何故かプレゼンの指導で教えなかったりします。

 

私はこの本でPREP法を知りました。とても分かりやすく、高校生に教えるのにも使えるので、プレゼンを指導する際には一読の価値ありです。

 

 

スライドを極めればプレゼンは100%成功する!

スライドを極めればプレゼンは100%成功する!

  • 作者:河合 浩之
  • 発売日: 2015/04/23
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)