とある情報教師の独り言 #2

高等学校の教科『情報』の光と影

ワーク・ライフ・バランス

どうもご無沙汰しております(;´Д`)

 

現在、5月9日以来休みのない状況です。

更新しようにも疲れてしまって、内容を考えている余裕もありませんでしたね。

 

さて、そんな中で今回のテーマですが、まずはこちらの動画を


www.youtube.com

 

小室淑恵さんという方のTEDでのプレゼンです。

テーマは「長時間労働を無くせば少子化は解消する」です。

要は日本人の働き方についての提言です。

 

簡単に要点をまとめると

長時間労働をなくすことで、夫婦で育児ができるようになり、子どもを作ろうと思えるようになる。

長時間労働を無くすには、短時間労働者を増やすこと。

・短時間労働者は集中して仕事ができるので、業績を上げやすい。

・プライベートの時間がないと、新しいアイデアは生まれない。結果、無駄に長い時間の会議になり、長時間労働になってしまう。

・日本は少子高齢化を迎えるからこそ、1人1人の生産能力を上げないといけない。

などなど

 

これって学校現場にも突きつけたい内容なんですよね。

 

特に、「プライベートの時間がないと、新しいアイデアも生まれない」というのは重要ですよね。学校の先生こそ、様々な経験をして、授業にアウトプットしたり、経験談を話したりして、教育活動の質を上げていかないといけないと思います。

 

国語の先生が国語の勉強だけしていれば、良い国語の授業になるかといえば、そうではないと思います。逆に海外へ行って異文化を学ぶことで、逆に日本の価値を客観的に伝えられるようになるのではないでしょうか。他の教科でも同じようなことが言えるのだと思います。

 

特に進路指導や探究活動などは、先生に幅広い人生経験があれば、さまざまなアイデアが生まれるようになり、業者が作ったワークなんかに頼らずとも、充実した指導ができるようになります。そして学校ではSDGsをやたら示す割に、当の教員自身が持続可能な働き方を行っていないわけです。つまり教員にSDGsなどを語る資格などないのです。そりゃ生徒もつまらなそうに探究活動をするわけです。

 

この小室さんの動画は2012年のもので、約10年も経っています。しかし、学校現場では未だに決定的な働き方は改革は行われていません。人も増やさなければ、業務も減るわけではありません。頑張れば頑張るほど、逆に自分たちの首を絞めていくということに、早く気づいてほしいものですが、教員自身がそれに気づくことが難しいので、上に立つ人が無理矢理にでも変えていって欲しいものです。

 

 

情報Ⅰはどの学年で実施すべきか

情報は必履修科目ではありますが、実施する学年に特に制限はありません。現行の「社会と情報」や「情報の科学」については、1年次に実施するのが望ましいとされています。

 

理由は、1年のときにPCスキルや情報の整理やプレゼンスキルなどを身に着けて、探究活動などの学校活動に役立ててもらうためです。またコンピュータ室の使い方を覚える必要もあるので、なるべく高校1年で実施すべきとされています。

 

1年次に実施しないとなると2年次になりますが、授業をする上では決して悪い話でもありません。単純に高学年の方が理解が良いので、思い切って応用的な学習に踏み切ることもできます。特にプログラミングをまともにやろうとすると、ある程度の論理的思考が求められるので、高校数学や英語を1年間勉強してきた2年生の方が、授業しやすい面もあります。

 

また、情報Ⅰの最初の単元は「問題解決」であり、これを高校入学したばかりの生徒に求めるには少し難しいのではないかと思っています。問題解決のテーマをどうするのかにもよりますが、例えば自分の学校の問題をテーマにしたときに、入学したての生徒にはまず無理な相談です。しかし、2年生であれば学校の問題点なども挙げられるようになると思います。

 

そして共通テストの存在ですね。なるべく受験に近いところで履修させたいという考えもあります。3年次に実施では流石に無理があるので、受験を意識するとなると2年次での実施が良いのかもしれません。

 

ただ、問題解決というのは探究活動に限らず、あらゆる教科で求められるようになっています。他教科の授業において問題解決学習というのを充実させたいのであれば、情報Ⅰをなるべく早い段階で実施させておくべきだとは思います。

 

共通テストのことにしても、仮に2年次に実施したとしても、受験を意識した授業展開を行うわけではありません。基本的にコンピュータを用いた実習形式の授業が中心となるし、受験のために座学を増やすわけにもいきません。そうなると受験対策というのは、どのみち3年次に選択科目や課外授業などで対策せざるを得ません。

 

このように2年次で実施するにもメリットやデメリットもあるので、それが正解かどうかは分かりません。個人的には1年次に実施すべきと考えています。やはり、早い段階で問題解決学習やコンピュータ活用を教えて、探究活動や他教科の授業に活かしてほしいと思っています。

 

しかし現実は、他教科の教員から見れば情報Ⅰの内容なんて興味もないし、知りもしないので、カリキュラム編成においては雑に扱われがちです。例えば、社会科で地理が必修になったために、1年次でなるべく5教科を詰め込みたいがゆえに、情報科が2年次に押し出されることもあります。自分が過去に勤務した学校では、進学校にも関わらず3年次に情報科を追いやったくらいですから。他教科の先生から見れば、パズル感覚で科目を設定しているのが、残念でなりません。

 

 

【雑記】4月の終わり

 どうもこんばんは。

4月も今日で終わり、世間ではGWが始まっているのでしょうか。

 

私は今年度から私立高校の常勤講師として勤務しています。それまでは長らく非常勤講師でしたので、とにかく環境の変化に戸惑ってばかりでした。授業以外に学年、校務分掌、そして部活と、まずは慣れることに必死でしたね。しかし、まだ慣れてはいませんけどね(;´∀`)

 

授業にしても新しい学校というだけで、これまでの経験があってないようなものです。生徒が変われば教え方も変わるし、そしてその学校でのやり方というのがあります。特に情報科の場合、学校によってやっていることが全然違うので、その内容に合わせるだけでも一苦労です。とはいえ、新しいことを学べるのは楽しいものです。

 

そして部活動です。副顧問ではありますが、全くの未経験の運動部でした。主顧問の先生がまだ技術指導もできるのでマシではありますが、休日は不定期なのが辛いところです。ただ嫌々やると本当に辛くなるので、これも経験だと思い、1つ1つを自分のためになるように考えています。というか、そう思わないとやってられませんからね(;^ω^)

 

慣れないことばかりで大変ではありますが、万年非常勤だった自分が、常勤として雇われている事自体が奇跡なので、むしろありがたく思いながら仕事しています。特に公立では、情報で常勤なんてあり得なかったことですし。

 

まだまだ不安が多いですが、とりあえずは体を壊さないようにだけ気をつけて、まずは1年を乗り切ろうと思います。

 

 

 

 

共通テストの情報は必須科目とされるのか

benesse.jp

 

2025年度から大学入試共通テストに「教科・情報」が追加されることは決まりそうですが、問題は大学の方がどれくらい必須科目にするかどうかです。

 

そもそも「情報関係基礎」という科目はセンター試験時代から存在していました。しかし、数学②の中に取り込まれていたために、数学を選択するケースが殆どでした。その気になれば、情報系の大学は必須科目にしていできたはずなのに、そうはなりませんでした。

 

理由はおそらく「情報を指導できる教員がいない」からでしょう。情報関係基礎を指定してしまうと、情報科の専任がいない高校の生徒が不利になってしまいます。それゆえ大学側も強気に出れなかったのではと思います。

 

そう考えると、仮に正式に教科として情報科目が追加されたとして、指導者の問題が解決できなければ、必須科目にできない大学が続出するのではと思います。そもそも共通テストは記述式の問題や英語のスピーキングテストも検討されていましたが、立ち消えてしまいました。いくら必要とされる能力の試験であっても、実現性が低くなれば実施が難しいと判断されてしまうのです。

 

情報の共通テストが必須科目とされるためには、情報科専任の配置が必要です。しかし、整備するためのタイムリミットは実質1年を切っています。来年度の高校1年生から「情報Ⅰ」を履修し、彼らが高校3年で受験するときに、情報が共通テストに登場します。それなのに現時点で情報科教員が足りないと言っている時点で、雲行きは相当悪いような気がします。

 

せっかく追い風が吹いてきたかというのに、結局教員不足でまた向かい風になってしまうかと思うと、残念でなりません。また教員不足を解決するために、他教科の教員を情報科に引っ張ったとしても、根本的問題は何も解決しません。まずは副免許を廃止したり、非正規で頑張っている人たちを積極的に正規に採用するなど、本当に必要である扱いをしないと、教員不足は解決しないし、志願者も増えることはありません。

 

その前にやるべきこと

文部科学省がこのようなことを企画しているようです。

www.mext.go.jp

 

情報科の専任が足りないけど、情報の授業は情報の専任がすべき。だったら、複数校掛け持ちさせりゃあいいじゃない、っていう発想です。要は、今まで非常勤講師がやってきたようなことを、情報の免許を持っている教諭にやらせるといった感じです。

 

少し気になったのが、「高等学校教科「情報」の免許保持教員による」という部分です。つまり情報の免許を持っている他教科の教員に対しての話なのでしょうか?情報科の専任を採用することはもう諦めてしまっていて、他教科とはいえ既存の教諭を酷使することを選んでしまったように思えます。

 

しかし、情報科の専任が足りない足りないと言っている割に、情報科の教員採用は高倍率という謎があります。情報教育について研究されている中野先生のWebページのデータから、情報科の教員採用試験の合格者と不合格者の数を計算してみました。

 

www.nakano.ac

 

すると、

 

受験者数(志願者数) 536人

合格者(採用者数)  77人

不合格者数      459人

 

足りない足りないと言いつつ、不合格者数のほうが圧倒的多いという現実です。何故、目先の志願者を切り捨てて、現場の教諭に無理をさせるのでしょうか?足りないなら採用数を増やせばいいのに、それを実行しない理由が分かりません。

 

私の自治体でも、昨年はたった1人しか採用せず、15人の不合格者が出ました。そのうちの1人が私でもあるのですが、情報教育に対して前向きな志願者を無視して、やる気のない他教科の教諭に授業を担当させているのが現実です。

 

今回の文科省の案は、個人的には悪くない考えだと思います。やる気のない他教科の教員に持たせるより、専門の教員に持たせたほうが当然良い。そのために、校務の負担を軽減し、勤務形態を見直す。私がその役目を求められたら喜んでやりたいです。そもそも非常勤講師でやってきたことでもありますし。

 

しかし、その前にやることがあるのではないでしょうか。情報科教員の成り手が少ない中で、非常勤講師という不安定な立場で頑張ってきた先生たちを、まずは採用できるだけ採用してから、このような案を出すべきだと思います。

教師のバトン その2

すぎやま先生という方の、この動画がよくまとめてくれていますね。説明もすごい分かりやすいです。


www.youtube.com

 

要するに教員に何でもやらせすぎなんですよね。もちろん何でもできる先生もいます。そういう先生だけ採用すればいいのでしょうが、そんな完璧超人が都合よく教員になるとは限りません。多くの先生は完璧ではないのです。しかし、それぞれに個性があり、得意分野があるはずです。生徒の個性は伸ばせ伸ばせというくせに、教員に対してはその逆を求めてしまっているような気がします。

 

そして教員仕事を複雑にしているのが、他でもない教員という事実。部活にしても、部活大好きな教員は、教材研究を頑張る教員を認めないことがあります。それはそれで個人の考えとしては構わないのですが、自分を正当化するために他人を巻き込むのは言語道断です。それが平然とまかり通っているから、耐えられない先生も多いのではないのでしょうか。

教師のバトン

文部科学省が考えた「教師のバトン」という企画が物議を醸しだしています。

 

www.mext.go.jp

 

簡単に言うと、Twitterで「#教師のバトン」とつけて、教員をやっていて良かったことをツイートしようという企画です。

 

事の発端は教員志願者の減少でしょう。学校という職場にネガティブなイメージばかりが付きすぎたので、少しでもイメージアップに繋げようと呼びかけたのだと思います。

 

しかし、実際は学校や教員という仕事に対する不満で溢れかえってしまいました。いわゆる炎上というやつです。

tenshoku-teacher.com

 

教員の仕事は確かに楽なものではありませんが、それが本当にやり甲斐のある仕事であれば、先生たちは音を上げることはないはずです。例えば、授業の内容を考えたり、準備をするのが苦痛な先生というは、基本的にはいないはずです。しかし、例えば部活指導が放課後や休日を圧迫し、授業準備が深夜であったり休日であったり、無理をしないとできない状況に追い込まれたりします。本来は優先すべき授業が、後回しにならざらるを得ない状況になっています。

 

私は非常勤講師の期間が長かったですが、仕事としては楽しかったです。授業のことだけを考え、無理なく授業準備や、新しい試みをどんどん考えることができたからです。放課後などの生徒対応も落ち着いてできるのも大きいですね。雇用の不安さえなければ、とても楽しい仕事だったと思います。

 

もちろん教諭や常勤の先生が授業だけに専念できることはできません。しかし、可能な限り授業のために時間を使わせてあげることが重要なのだと思います。そのために必要なのは「想い」などといった抽象的なものでなく、業務を精選し放課後や休日の確保というのを強引にでも実行すべきです。

 

部活動に関しては、部活動指導員の配置が始まり、徐々に解決の方向へ向かうようになりましたが、これも人員や予算の問題がある以上は、すぐに教員の職場環境が改善されるとは思えません。ゆっくりと解決している間にも、教員志願者は減るどころか、現職の教員も離れ続けていきます。

 

なので、本当に必要なことは政治の力で無理矢理にでも変えることではないかと思います。例えば、日曜はいかなる学校活動も禁止するとか、破れば厳しい罰則を課すとか、強制力を働かせない限り、小手先の策だけでは改善されることはないと思います。

 

教師のバトンを、きれいに渡せる時代が来るかどうか。これは気持ちの問題ではないのだと、国や自治体にはよく考えて欲しいものですね。